「ギャンブル依存症は病気。ダメ人間なんかじゃない!」
ギャンブル依存症と聞くと、多くの人は「だらしがない」や「意志が弱い」、「自己責任」といった印象を抱くだろう。
しかし、それは大きな間違いだとギャンブル依存症問題を考える会代表理事の田中紀子さんはいう。
24時間365日 全国対応 無料
2020.11.13 更新
「ギャンブル依存症は病気。ダメ人間なんかじゃない!」
ギャンブル依存症と聞くと、多くの人は「だらしがない」や「意志が弱い」、「自己責任」といった印象を抱くだろう。
しかし、それは大きな間違いだとギャンブル依存症問題を考える会代表理事の田中紀子さんはいう。
私のもとへ相談に来られる方は、「ちゃんと仕事はしているから自分はギャンブル依存症じゃない」「家庭的で子育てにも積極的な彼がギャンブル依存症なわけがない」とおっしゃるケースが多いんです。
しかしギャンブル依存症は、誰にでもなる可能性がある脳の病気です。だらしがない人がなるのではなく、むしろお金に余裕のある会社員に多い病気ともいえます。
世間一般の持つイメージとは裏腹に、最初から無職で遊び人みたいな人はほとんどいません。依存症が進行した結果、職を失い、家族を失い、全てを失ってもやめられない人はいますが。
このように偏見や誤解の多い病気なので、自身や家族がギャンブル依存症になっていることに気づかないケースも少なくありません。そこで「もしかしてギャンブル依存症かも?」と感じている人にチェックしてもらいたいのがLostです。
Lostとは、「Limitless」「Once Again」「Secret」「Take Money Back」の頭文字からとったチェックリストのこと。この中から2つ以上当てはまるものがあれば、ギャンブル依存症の可能性が高いといえます。
Limitless
Limitlessは、ギャンブルの予算や時間にリミット(制限)を設けていないことを指します。ギャンブルを優先するあまり、子供の誕生日や結婚記念日、待ち合わせ、商談などといった重要な約束をすっぽかしてしまう。これはギャンブル依存症になっている方には、本当多いんです。
Once Again
Once Againは、ギャンブルに勝って得た利益を次のギャンブルに使ってしまうこと。せっかくギャンブルに勝ったんだから、借金があれば借金の返済、または自分の欲しかったものの購入資金に回せば良いと思いますよね。
しかしギャンブル依存症になっている方は、その利益も次のギャンブルに使ってしまうんです。いわばお金の優先順位が狂ってしまっている状態ですね。
Secret
Secretはその名の通り、ギャンブルしたことを家族や友人など周りの人に隠す状態を指します。つまりギャンブルをしていることに後ろめたさ、罪悪感を感じている状態。趣味の範囲であれば、隠す必要がないので堂々としているはずなんです。
Take Money Back
そしてTake Money Backは、ギャンブルに負けた金額を、すぐにギャンブルで取り返そうしてしまうこと。ギャンブル依存症になると、ギャンブルで負けた金額はギャンブルで取り返すしかないという心理に陥ってしまうんです。「これだけギャンブルに使って失禁借金まで作ってしまった、これをコツコツ働いて返していかなきゃいけない」と思ったら不安で仕方ないですから。ギャンブルで一発逆転、取り返せばいいんだと自分に言い聞かせる。これもギャンブル依存症ならでは考え方だと思います。
ギャンブル依存症は、脳内でドーパミンなどの神経伝達物質が機能不全に陥る立派な病気です。似ている病気にセロトニンが低下する、うつ病がありますが、ギャンブル依存症もギャンブルをしていないと不安になったりイライラする。
ギャンブル依存症になると、自分でも「止めるべき」と自覚しているのに不可解な行動をとってしまうんです。だから、どんどん自分が嫌いになる。自己肯定感や自尊心も低くなり、生きてること自体がつらくなっていきます。
病気なので、根性や気合ではどうすることもできないんです。だから「自分はどうしてギャンブルすらやめられないのか」「なんてだらしがないんだ」と自分を責める必要はない。
また家族にギャンブル依存症の疑いがある場合、「だらしがない!」「甘えるな!」などと精神論で責めてはいけません。そして絶対に借金の肩代わりはしないこと。ギャンブル依存症から抜け出すためには、底つきを経験する必要があります。「借金が膨らみ、もう自分ではどうすることもできない」と行き詰まり、気持ちが底をついた状態になって初めてギャンブル依存症から抜け出すチャンスが生まれる。
底つきを経験する前に借金を肩代わりしてしまうと、本人は「なんとかなるんだ」と真の苦しみを感じることがない。そうすると、また借金をしてでもギャンブルに打ち込んでしまうんです。ギャンブル依存症から抜け出すためには、「この苦しみから抜け出せるならなんでもやる」と、自分自身が回復への意欲を持つことが必要です。
またギャンブル依存症は、ほかの依存症と比べて社会的介入の余地が少ないのが特徴です。例えばアルコール依存症なら、健康診断や診察をキッカケに内科からのリエゾンで精神科への通院につながる。薬物の場合も逮捕がキッカケで、保護観察所で薬物依存症教育を受けたり、弁護士や司法関係者から支援に繋がってくることもあります。
しかしギャンブルの場合は、健康診断を受けても数値として出ないし、事件を起こさない限り逮捕されることもありません。だからこそギャンブル依存症を克服するには、社会全体の理解と家族支援が最も重要だと思っています。
自分や家族、友人が、ギャンブル依存症かもしれないと思ったら、各地にある精神保健福祉センター、「ギャンブル依存症問題を考える会」や家族会、自助グループ、ギャンブル依存症の専門病院に相談してください。ギャンブル依存症から抜け出すキッカケとしては、ギャンブルが原因で陥った多重債務を苦に専門機関や自助グループにまずご家族が相談することが重要です。
ギャンブル依存症に苦しむご自身とご家族の方の力になれるよう、私たちも試行錯誤を重ねています。まずはご相談いただけたらと思います。
ギャンブル依存症問題を考える会 公式ページはこちら